ワンポイント税務
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「笑顔相続」実現のための”原状分析”とは
「笑顔相続」とは、残された家族の「故人への感謝」「お互いの良好な関係」「納税への安心」の3つが保たれていることです。今回はそのために必要な考え方と対策についてお話しいたします。
一般社団法人相続診断協会代表理事小川実
笑顔相続に必要なのは「現状分析」です。もし頭痛のとき、専門家の診断もなく薬を飲むのは危険ですよね。相続も同じです。相続税の試算や相続人の意向を確認しながら対策を選択するべきです。そこで現状分析に必要な5原則を知っていただきたいと思います。
1.大家さんのすべての財産を評価します。
この際に注意していただきたいのは、
・生命保険金や生命保険に関する権利(被相続人が別で保険料を負担している保険)
・書画・骨とう品・美術品など
・生前贈与した財産(相続税の計算に含まれなくても、遺産分割においては重要です)
・相続時精算課税制度を使って贈与した財産債務、保証債務
など漏れのないようにすることです。
2.一緒に配偶者の相続財産も評価します。
3.そして、相続税額の計算です。
①1.で洗い出した財産を相続税評価額によって、相続税額を計算します。
②先に被相続人様が亡くなった前提で、配偶者の相続発生時の税額計算も行っておきます。
4.相続税額だけでなく次の点も調べます。
不動産は財産の50%以上を占めることも多く換金しにくいので誰に受け継いでもらうかはとても重要です。そのために次の点について、不動産を受け継がせたい子供たちにしっかりと伝えておく必要があります。
①不動産の評価はいくらか?
⇒固定資産税評価額と相続税評価額、必ず両方とも確認します。
②契約書類の確認
⇒取得時の売買契約書・権利証・賃貸契約書などを確認しておきます。
③キャッシュフローはいくらあるのか?
借入れがある場合は償還期間や借入利率を確認します。賃貸物件は空室率を考慮して現実的なキャッシュフローを計算します。
④将来の修理費用の見込みは?
特に大規模修繕費用を計算しておきます。
⑤売却するとしたらいくらで売れるか?
実際の売却見込額を周辺事例で確認します。
⑥都市計画などの調査
20 年以上前の着手されてない計画や途中で頓挫している計画がたくさんあります。相続税評価の計算で減額の可能性を検討します。売却のとき重要な査定要素の一つになります。
⑦いつから、どういう経緯で取得したのか?
先祖代々の土地か?一代で手に入れた財産か?など不動産の歴史は「誰に受け継がせたいか」を考える際とても重要です。また祖父からの相続で兄弟姉妹の共有になっていた土地を苦労して買い集めたという話はよく聞きます。相続人であるお子さん達は新たな不動産を取得することになるので、メリットやデメリットの現状を把握しておきましょう。
そして、相続税額と財産の意味を考慮して、昔からの借地権は契約書がないことも多く引き継ぎが厄介です。対策時に契約書を締結しておきましょう。
5.配偶者と一緒になって2人の財産を誰に渡したいかを考えます。
このようにご自身の財産の現状をしっかりと分析し誰に受け継いで欲しいかを決めるためのステップとして、この現状分析という作業は重要です。大家さんご自身の歴史と不動産の歴史を考えると、受け継いで欲しい人が自然と分かってくるのではないでしょうか?このような手順で、「ご家族にとって大切な財産を○○と〇〇に受け渡したい」と決めていく事が、笑顔相続には欠かせないステップなのです。受け継がせる側の認識があいまいのままでは、笑顔相続対策は進められません。ご自分の気持ちをしっかりと決める。そこから笑顔相続対策が始まります。
次回は、決めた内容を正確に伝えるための「遺
言と付言事項について」をお伝えします。