ワンポイント税務
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今月は「小規模宅地等の特例」です。
今月は「小規模宅地等の特例」です。最初に、この制度が出来た背景から説明いたします。バブルの頃と比べると路線価はかなり下がったというものの、都市部では猫の額(ひたい)ほどの居住地でも、相続税を心配しなければならなくなりました。店舗や工場の敷地に高額な相続税が課されて、土地を売却しなければ相続税が払えな
い、という事態も起こっています。事業に使用している土地や居住用の土地は生活基盤ですから、税金のために処分すれば生活が維持できません。路線価に基づいてストレートに課税されてしまっては「たまったものではない」のです。こうした問題に配慮するために作られたのが「小規模宅地等の特例」です。この特例を使うことで、亡くなった方の事業用宅地や居住用宅地が、通常の相続税評価額より減額されることになります。ただし「限度面積までに限る」ことと「一定割合の減額」という制約があります。
つまり居住用宅地の場合は330 ㎡までの評価額について80 %オフしてくれる、とうことです。例えば、下図のように亡くなった方の自宅の敷地が330 ㎡あったとします。
土地の相続税評価額が4000 万円だった場合80 %オフになるので、なんと評価が800 万円に減額されるのです。この小規模宅地等の特例のうち「居住用宅地」に焦点を絞って解説いたします。この特例を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。その要件のポイントとなるものが2 つあります。
1 つ目は、誰が自宅の土地を相続するのか。
2 つ目は、相続後にその自宅に居住するのか、その自宅を売却するのか。
この特例が適用できるかどうかについては、次のフローチャートで確認してみてください。
まず配偶者が自宅の土地を相続した場合は、そこに住み続けても、あるいは売却しても、この要件を満たすことができます。配偶者なら文句なしに小規模宅地等の特例を受けることが出来ます。一方で、同居している子供が自宅の土地を相続した場合は、申告期限までに売却すると特例が受けられなくなります。申告期限とは亡くなっ
た日から10 ヶ月です。では、自宅の土地は配偶者が相続した方が有利なのか?というと、今度は2 次相続のときに相続税が高くなる可能性があります。ここはケースバイケースですが、できればこの特例は配偶者ではなく、同居している子どもに受けてもらうことをお勧めしています。なぜなら、配偶者には相続税を軽減させる特例(配偶者の税額軽減)があるため、小規模宅地等の特例を受けなくても、税金が発生しない可能性が高いからです。
上の図でひとつの事例を説明しましょう。660 ㎡の自宅の土地を相続する場合は、配偶者と同居している子供で330 ㎡ずつ相続して共有名義とします。そして配偶者が取得した330 ㎡については小規模宅地等の特例は受けないで、子どもの方で適用を受けます。このようにすると2 次相続のときに、配偶者が1 次相続で取得した330 ㎡の土地について、もう一度適用を受けることが出来て節税効果が高まります。税務の実務でも、自宅の土地に小規模宅地等の特例を適用させるケースは多くあります。ぜひ、覚えておいてください。