ワンポイント税務
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相続税の時効は何年か?
相続税の時効は何年か?
次のようなご相談をいただきました。『ずいぶん前に亡くなったお祖父さんの土地が出てきた(発見された)のですが、今から相続の登記をしたら、相続税はどのくらいかかるのですか? 現在の評価額は〇〇〇万円ほどです。』(※なお、相続税の申告をする場合の評価額(時価)は、亡くなった日のものです。)私が、『お祖父さんはいつ頃亡くなられたのですか?』と尋ねると、『1 5年ほど前だったと思います・・・?』というご返事でした。
『でしたら、既に時効ですから、誰がどのように相続しても相続税はかかりませんよ』と説明しました。
相続税の時効の規定は以下の通りです。
(イ)通常の場合は5年経過すると時効が成立。「通常の場合」とは、脱税の意思はなく、知らなかったので申告から漏れたという状態です。
(ロ)仮装や隠ぺいの事実があった場合は7年経過すると時効が成立。脱税の意思があって、知っていて申告しなかった状態です。
相続税の申告期限は、「相続開始を知った日の翌日から起算して10ヶ月」となっております。この取り扱いは、「人が亡く
なった日が相続開始の日であり、通常はその日を知った日」となります。したがって、平成28年7月7日に亡くなった場合は、その申告期限は平成29年5月7日となりますから、(イ)の場合の時効は5年後の平成34年5月7日となります。(ロ)の場合の時効は7年後の平成36年5月7日となります。しかし、アパートで一人暮らしの親が何ヶ月も前に亡くなっていたのを、大家さんからの知らせにより警察が死亡を確認し、子供に通知した場合は、その「通知の日が知った日」となり、その日の翌日から10ヶ月となります。また、行方不明だ
った親が死亡し、警察の調べで身元が分かり、その知らせが届いたような場合にも、死亡した日ではなく、「知らせが届き、
確認をした日が知った日」となり、その日の翌日から10ヶ月となります。逆に、行方不明であった子が親の死を知らずにいたが、親族等がその子の所在をつきとめ、親の死を知らされた時は、その子にとっては「知らされた時が知った日」となります。(※死亡を知った日が平成28年10月10日であったら、申告期限は平成29年8月10日です。)では、贈与税の時効は何年か?某社の社長さんが、『10年ほど前に息子と娘にお金を〇〇〇万円づつ贈与したのだが、某税理士から「金額が大きいので加算税や延滞税が相当かかりますから、早めに申告した方が良いですよ。」と言われたので心配で仕方がない。どうしたらよいか・・・?』と、相談を受けたことがあります。その税理士さんは、どのようなお考えで贈与税の申告をするように勧めたのでしょうか・・・。
私はその方に、『贈与したのが事実なら、時効になっていますから申告の必要は無いですよ。』と、答えました。贈与税時効の規定は以下の通りです。(イ)通常の場合は6年経過すると時効が成立。「通常の場合」とは、脱税の意思はなく、知らなかったので申告から漏れたという状態です。
(ロ)仮装や隠ぺいの事実があった場合は7年経過すると時効が成立。脱税の意思があって、知っていて申告しなかった状態です。
贈与税の申告期限は、「贈与を受けた日の翌年の3月15日」となっております。したがって、平成28年7月7日に贈与
を受けた場合、その申告期限は平成29年3月15日となりますから、そこから6年経てば(平成35年3月15日になれば)
時効となります。
また、どんなに悪いこと(?)をして隠していた場合でも、7年経てば(平成36年3月15日になれば)これも時効という
ことになります。ただし、相続のように「知った日から」という扱いはありません。なぜなら、『贈与とは、受領した者はその事実(贈与を受けたこと)を当然に知っている。』はずだからです。相続税の時効は「知った日から」、贈与税の時効は「受けた日から」。この違いを理解して、相続税の調査では、被相続人から親族等の名義に移動した預貯金が「贈与されたものかどうか」が大きなポイントとなるのです。税理士谷口賢吉