オーナー座談会
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2021年10月号 コロナ禍の賃貸経営
これまでと今後を考える
新型コロナ問題がなかなか収まりません。
今回は、コロナが賃貸経営に与えた影響と今後の 「あり方」について考えたいと思います。
去年の4月頃にある専門家が「コロナが収まるまで2年以上かかる」と言ってるのを聞いて「まさかー」と思いましたがそれが現実になりましたね。
完全な終息は諦めて共存していくしかないみたいです。ウィズコロナですね。
コロナ騒動が始まったばかりの去年4月5月の時点では、賃貸経営はコロナ不況から「空室」と「滞納」という大問題に襲われるのでは、と言われましたね。実際にはどうだったのでしょうか?
もちろん地域差はあると前置きした上ですが、居住用物件とテナント物件で大きく異なりますね。テナント賃貸は、店舗や事務所の撤退が相次いだので空室率はかなり悪化しました。賃料の減額請求も多く寄せられたと聞きますね。
それに対して居住用は、総じて心配したほどの事態にはなりませんでしたね。コロナによって新規需要は減ったけど、移動の自粛で解約も減ったので、プラスマイナスで大きな空室率悪化にはならなかった、ということでしょうか。
去年春の新規需要と言えば、単身者物件が一番影響を受けた感じがあります。僕の1Kマンションも学生や外国人や法人需要が減りましたからね。
たしかに去年3月の転勤は減ったようです。でも秋にはかなり戻ったとも聞きますね。
空室問題に関係する話題として、新しい借主のニーズが生まれましたね。リモートワークが増えたことによって、入居者アンケートの上位に「仕事専用スペース」「宅配ボックス」「換気や通風」「遮音性」「部屋数」などへの要望が並ぶようになりました。今まで言われていた「日当たり」や「駅近」より上回る項目もあるようです。それを求めての転居が増えたのですよね。
今まで不人気だった「部屋数の多い物件」が見直されている、ということですね。そういう物件を所有している大家さんにはチャンスになります。
その利点を強調することが大事ですね。
もうひとつ、リモートワークはインターネットが必需です。それも「ただ使える」よりも「高速でサクサク使える」というニーズに変化しています。
「インターネット無料物件」が増えていると聞きますが、そこに「高速」という条件も検討課題ということですね。
これらは、今後もコロナと共存の賃貸経営を模索するときに、とても参考になるニーズです。
滞納はどうですか?景気悪化が長引けば、当然に収入が減少して滞納が増える、という連鎖が起こると予想されていましたけど。
じつは興味深いデータがありまして、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の家賃滞納率の推移を見てみると、2019年より2020年の方が良くなっているのです。具体的には全国の2ヶ月以上の滞納率が、2019年の1.0%が2020年に0.9%に、若干ですが改善しています。
その理由になるか分かりませんけど、不動産会社や家賃保証会社が、入居者に受給が可能な各種助成金申請をサポートしながら家賃を回収していたと聞きました。
当面の生活資金が確保できる緊急小口資金や総合支援資金とか、家賃の負担を軽減する住居確保給付金などの情報提供とサポートですよね。僕もこれらが、滞納率が悪化していない理由のひとつなのだと思います。
一方で、リーマンショック以上の景気後退と言われてますから、これから失業率の悪化などの影響が出てくる可能性もあります。特に非正規雇用の失業率は心配です。コロナ禍が続く中では滞納について油断はできないですね。
住居確保給付金は、今年から最長12ヶ月まで給付可能となりましたからね。今後も入居者へ積極的に助成金などの情報提供をしていくことが大事ですね。
賃貸経営者向けの給付金や軽減措置もありますから、該当する大家さんは活用すべきですよね。
今回のまとめとしては、テナント賃貸は別として居住用賃貸は、新型コロナの影響は限定的なレベルで済んでいる、と言ってよいと思います。ただ、コロナとの共存が続く中で景気悪化が長引くとすると、空室と滞
納について油断はできません。特に空室問題は、新しく生まれた借主ニーズを自分の物件対策に取り入れる検討が必要です。同じ時期に募集中のライバル物件に対して、少しでも競争力をつける意識ですね。