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2025年1月 弁護士による賃貸法律相談室 齋藤

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    賃貸借契約の中途解約を制限する条項は有効か

    ・・・・賃貸借契約の中途解約、どこまで制限できる?

    今回は、賃貸借契約における中途解約を制限する
    特約の有効性について、裁判例をもとに解説いたします。

    POINT 1
    借主の中途解約の場合、残存期間賃料を違約金として支払う特約は有効か?

     賃貸借契約書では、借主の中途解約を認める一方で違約金の条項が設定されている場合があります。よく見られるのは、中途解約の申入れは●ヵ月前までとした上で、「予告期間が●ヵ月に満たない場合は賃料及び管理費の不足月数相当額を賃貸人に支払うものとする。」といった条項です。これについては裁判例でも「暴利行為として公序良俗に違反するなどの特段の事情のない限り上記特約は有効である」としています(東京地方裁判所平成22年3月26日判決参照)。
     
    では、「借主が期間満了前に解約する場合は、解約予告日の翌日より期間満了日までの賃料・共益費相当額を違約金として支払う。」のような条項が設定されていた場合、この全額を請求できるのでしょうか?この点が問題となったのが、東京地方裁判所平成8年8月22日判決です。事業用の賃貸借契約ではありますが、裁判所の判断事例として参考になります。これは契約期間が4 年間のところ、開始から10ヵ月で借主から解約の申し出があったため、貸主が残存期間の3年2ヵ月分の賃料相当額を請求しました。裁判所は、「約三年二ヵ月分の賃料及び共益費相当額の違約金が請求可能な約定は、賃借人である被告会社に著しく不利であり、賃借人の解約の自由を極端に制約することになるから、その効力を全面的に認めることはできない。(解約日から)一年分の賃料及び共益費相当額の限度で有効であり、その余の部分は公序良俗に反して無効と解する。」と述べました。この裁判例から読み取れるのは、中途解約の違約金は「申入れから貸主が次の賃借人を募集して入居に至るまで必要と考えられる期間(概ね6ヵ月~1年程度)が相当である」ということです。

    POINT2
    賃借人の中途解約を禁止する特約は有効か?

     民法617 条と618 条を要約すると「賃貸借の期間を定めた場合でも、貸主や借主の一方又は双方に期間内に解約できる権利があるときは、建物の賃貸借では解約の申入れの日から定められた期間を経過することによって終了する。」と規定しています。したがって、契約期間を定めた賃貸借契約で、かつ、期間内に解約する権利が与えられていない場合には中途解約は認められないということとなります。土地の賃貸借契約で、この点について判断した最高裁判例があり(最高裁判所昭和48年10月12日判決)、「賃貸借における期間の定めは、当事者において解約権留保の特約をした場合には、その留保をした当事者の利益のためになされたものということができるが、そうでない場合には、賃貸人、賃借人双方の利益のためになされたものというべきであって、期間の定めのある賃貸借については、解約権を留保していない当事者が期間内に一方的にした解約申入れは無効であって、賃貸借はそれによって終了することはない。」と述べられています。
     
     建物の賃貸借契約では最高裁の判断はありませんが、東京地方裁判所平成23 年5月24日判決は、「賃貸借契約において、借主に対し賃貸借期間内の解約を禁止する特約が付されている場合、借主は、約定又は法定の解除事由が生じているときを除き、賃貸借期間満了前に一方的に当該賃貸借契約を解除することはできず、貸主がこれに応じた場合に限り、解除できると解するのが相当である。」と述べています。この事案では、賃借人が契約期間約1年4ヵ月を残して退去したのですが、中途解約が認められない以上、仮に建物を占有使用していなかったとしても、残存期間の賃料の支払いはしなければならないと判断しました。もっとも契約期間満了前に新たな借主が見つかり賃料等を得たり、当該物件の管理維持に要する費用の支出を免れたりしたようなときには、その分は差し引かれることとなります(前掲の東京地裁判決参照)。ただし、この判決事例の賃貸借契約期間は20 年間と長期だったので、残存期間が約1年4ヵ月でも中途解約は不可と判断された、ということに留意が必要です。もし、賃貸借契約期間が2~3年と短期の場合は、残存期間が半年から1年を超える期間のときは、中途解約を制限する条項が公序良俗に反するとして、賃借人は契約に拘束されず、違約金6ヵ月分程度で途中解約が認められる可能性が高いと考えられます。なお、居住用の賃貸借契約の借主は個人(非事業者)が多く、消費者契約法の適用を受けるので注意が必要です。消費者契約法における賃貸借契約の留意点については、また回を改めて詳しく解説いたします。

    弁護士 北村亮典 *この記事は、2024年12月31日時点の法令等に基づいて書かれています。



     

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