2024年11月 弁護士による賃貸法律相談室 齋藤 | さいたま市の賃貸は株式会社 別所不動産にお任せ下さい!

TOPページ
賃貸法律相談室
2024年11月 弁護士による賃貸法律相談室 齋藤

賃貸法律相談室

  • 2024年11月 弁護士による賃貸法律相談室 

        

    度重なる迷惑行為の賃借人に無催告解除は認められるか?

     今回は、アパートの賃借人が行った隣人への度重なる迷惑行為に対し、賃貸人が起こした賃貸借契約の無催告解除と建物明渡し訴訟の顛末を解説いたします。


     令和元年5月に入居した賃借人が、2ヶ月も経たない7月初めから迷惑行為を始めて、他室の住人だけでなく、迷惑行為をしている賃借人までも110番通報をして警察官が駆け付ける事態が複数回ありました。貸主は何度か注意しましたが改善がみられないので、約5ヶ月が経った段階で、賃借人に対し迷惑行為を理由として賃貸借契約解除の内容証明郵便を送付して明渡しを求めました。
     このような、賃借人が他の住民への迷惑行為でトラブルを生じさせた場合は、賃借人の債務不履行(近隣住民とトラブルを起こさないように努める義務の違反)に該当しますので、契約違反を主張して契約解除できれば、退去させることが可能となります。しかし、賃貸借契約の解除では「信頼関係破壊の法理」が適用されるので、認められるためには契約違反の程度が、賃貸人と賃借人との信頼関係を破壊するほどであることが必要です。
    このため、裁判となった場合には、

    ・行為の程度と期間・回数はどれくらいか
    ・行為によってどんな結果(悪影響)が生じたか
    ・行為に対して賃貸人側はどんな対処をしたか


    という点が問題となるのですが、解除の可否についての明確な基準がないため、公表されている裁判例をみて、その傾向を探っていく必要があります。
    上記で紹介したケース結果は、東京地方裁判所令和3年6月30日の判決で知ることができるので紹介いたします。まず裁判所は、賃貸人側からの契約違反に基づく無催告の解除を認めました。その理由について以下のように判断しています(一部中略)。


    ①「被告(迷惑行為をした賃借人)は、何ら合理的な理由がないにもかかわらず,夜中や明け方に他の居室を訪問し、インターホンを鳴らす、玄関ドアをたたく、玄関ドアを勝手に開けるなどの行為に及んだものであり、本件賃貸借契約の約款12条4号の「粗野又は乱暴な言動により、他の入居者に迷惑・不快の感を抱かせるおそれが明らかな場合」といえるので解除事由があるものと認められる。」
    ②「また,被告が原告(賃貸人)による度々の注意に従わなかった上、被告の上記各行為によって、102号室及び201号室が一旦空室又は空室となる見込みとなり原告が損害を被ったことなどの事実関係によれば、原告と被告との間の信頼関係が著しく損なわれる行為に当たるというべきであるから、本件賃貸借契約の約款15条8号の解除事由があるものと認められる(なお,原告による解除の意思表示後にも被告による迷惑行為が継続したことで、令和2年3月に本件建物の被告以外の全住人が退去したので、原告と被告との間の信頼関係が著しく損なわれたままであることが認められる)。」

     以上のように賃貸人の主張が認められて明け渡し判決が言い渡されました。本件は、迷惑行為の発生から契約解除の通告まで5ヶ月程度という比較的短い期間で、裁判所が契約書の無催告解除条項(債務不履行があったときに催告をしないで契約解除できると定めたもの)の適用を認めた点で特徴的といえますが、それだけ賃借人の行為の悪質性が高かったと言えます。他室の全賃借人が退去してしまったことも大きかったといえるでしょう。

     なお、このような事案では、賃借人の迷惑行為をどのように裁判で立証するか、ということが課題となりますが、本件では、賃貸会社の従業員が作成した「時系列」「クレーム管理」と題する書面と従業員の陳述書があり、それを裁判所は「具体的な内容が記載されており不自然又は不合理な点もみられないから信用することができる」と判断していますので、この点においても参考になる事例です。

    <本誌編集者より>
    このような入居者による迷惑行為トラブルで裁判まで発展するケースは多くはないと思われます。トラブルが発生したら、事実調査をして、必要な注意をし、それでも繰り返されるときは、何度でも注意をし続けます。そして、その記録を残しておきます。それでも止まないときは、最後の手段として契約解除通告をするのですが、その時期の決断が貸主側として重要です。遅すぎると、他の借主の被る迷惑が大きくなり、最悪は退去となってしまいます。そのために、行為のたびに説得と注意をし、記録を残し、ある程度の期間で解決しないなら契約解除通告に踏み切り、それで退去しないときは明け渡し訴訟という最終手段となるわけです。その最新の裁判事例をご紹介いたしました。

    弁護士 北村亮典 *この記事は、2024年9月31日時点の法令等に基づいて書かれています。

お知らせInformation

一覧はこちら
スタッフおすすめする

株式会社別所不動産

048-861-3333
営業時間:9:00~18:00
定休日:火曜日・水曜日