賃貸Q&A
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2021年3月号 賃貸管理業法
賃貸住宅管理業法とは?
管理スタッフが答えさせていただきます。
この「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(賃貸住宅管理業法)は、大家さんを保護するための法律と言っても過言ではありません。
そもそも管理業務は入居者の斡旋を任されていた不動産業者が無料で行うところから始まり、やがて昭和50年~60年の間に「有償サービス」と変化してきたのですが、これまでに明確なルールが確立されてきた訳ではありません。故に行う業者も玉石混交と言われます。
もし「不慣れな管理業務」を行う業者であれば、それは大家さんと入居者の不利益となってしまいます。平成初めには協会も設立されて情報共有や教育も進みましたが「法律で規制されていない」という現実に限界はあるようです。そこで管理業務のルールを適正化して取り締まる目的で本法律が成立したという次第です。規制される側の私たちとしては「やっかいな部分」があるのは事実ですが、目指している「大家さんの賃貸経営に役立つ賃貸管理」が標準となるためには必要な法律だと考えています。
この法律は、「賃貸住宅管理業者の登録」と「サブリース契約の適正化」の2本立てになっています。サブリースに関しては次の機会で説明させていただきますので、今回は「管理業者の登録」と、それが大家さんに与える利益について概説いたします。
サブリース契約の適正化については
別ページにて説明しておりますので、合わせてご覧ください。→サブリース契約の適正化
今までは管理業務を行うのに登録の必要はなく、誰でも開始することができました。
仮に管理業務の経験がゼロでも請け負うことができるのです。
そこで平成23年には賃貸住宅管理業者登録制度がスタートしましたが、この登録は任意でした。それが本法律で義務となります。登録をせずに管理業を行うと1年以下の懲役・100万円以下の罰金となります。本法律が登録業者に義務づけている重要な項目は4つあります。
1.業務管理者の配置大家さんに役立つ管理業務を行うには経験と知識が必要ですので、営業所ごとに1人以上の「業務管理者」の配置が義務づけられます。条件としては、5年以上の実務経験、賃貸不動産経営管理士又は一定の講習を修了した宅地建物取引士、などになるようです。そのためか管理会社の中にも、賃貸不動産経営管理士の資格取得を奨励する動きがおきています。この資格は現在は民間レベルですが将来的には国家資格となると言われています。
2.管理受託契約締結前の重要事項の説明大家さんが管理を依頼するか決めるために必要な情報を事前に説明することが義務づけられます。この説明を受けることで大家さんは、質問、交渉、契約締結の再検討などができるようになるので少し安心できます。
3.財産の分別管理
昭和60年代や平成初期の賃貸借契約では多額の敷金や保証金を貸主が預かっていましたが、それを管理会社が保管することも多く行われていました。最近では敷金ゼロも増えて以前ほどではありませんが、万一管理会社の経営が行き詰まると返却不能という事態になり得ます。それを避けるために会社の資産と預り金の分別管理が義務づけられました。
4.定期報告
大家さんへの賃料入金状況や建物維持管理報告はすでに行われていますが、具体的にどのような報告義務が法律で規定されるかは国土交通省令で定めることになっています。
さて、以上の内容を確認したところで「これで本当に管理業務の質が向上するのか!?」と疑問視される方もいるかもしれません。
実は昭和27年に成立した宅地建物取引業法もそうでしたが、このような法律は施行後に徐々に規制が強化されることがあります。
たとえば「登録義務」が「免許制」に変わるとか、業務管理者の資格要件が国家資格保持者になるとか、定期報告の義務内容が強化される、などです。
まず管理業務を規制する法律が作られた、というところに大きな意義があるのではないかと思います。今年の6月から施行される予定と言われています。施行後はインターネットで業者の登録内容が一般で閲覧できると思われます。一度、覗いてみてはいかがでしょうか。