業界ニュース
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2024年10月 賃貸業界のニュースから
空き家活用の移住制度、相続土地を国に返還、ほか
【移住促進】賃貸住宅の建設に補助金活用
複数の自治体で空き家を活用した移住施策を進めていますが、「若い子育て世帯や女性には古い家は住みづらく、大きな家を持て余してしまう」という声が挙がっていました。そこで兵庫県養父(やぶ)市では、子育て世帯や若者夫婦、単身女性のニーズに合う新築の集合住宅を増やして移住や定住を促進する、という制度を開始しました。これは、民間集合賃貸住宅の建設を支援する新たな補助金制度を創設したもので、この補助金は、養父市内で集合賃貸住宅の建設を行う事業者を対象としています。補助金の額は建築費の3分の1で、1戸あたりの上限額は300万円です。ただし、レディースマンション(女性専用)の場合は、上限額が400万円に引き上げられます。補助の対象となる住宅には、4戸以上の規模であること、敷地内に1戸あたり1台以上の駐車場を確保すること、各戸に専用の玄関・トイレ・浴室・台所を設置することなどの条件があります。さらに、実績報告の提出日までに入居者募集を開始し、その開始日から10年間は子育て世帯や若者夫婦(レディースマンションの場合は単身女性)に限定して募集を行うことが条件となっています。また、補助金の額の確定通知日から10年間は維持管理することが求められます。事業者の選定は公募形式で行われ、今年度は10戸分の助成を予定しています。これから賃貸住宅を建てるオーナーにとっても補助金は有り難い仕組みです。成功すれば、同様の取り組みを行う自治体もでてきそうです。
【相続土地の国有制度】返納土地667件
不要なうえ、管理費や固定資産税や管理責任が課される土地を、国へ返還できる相続土地国庫帰属制度が2023年の4月に施行されて1年以上が経過しました。法務省が発表した統計によると、2024年7月末時点での申請総数は2,481件に上りますが、実際に国有化された土地は667件にとどまっているようです。申請された土地の内訳を見ると、田畑が930件と最多で、次いで宅地889件、山林391件となっています。一方、国有化されたなかでは宅地が272件と最も多
く、農用地203件、森林20件と続きます。気になるのは却下・不承認件数と取下げ件数です。却下は11件、不承認は30件と比較的少数ですが、取下げは333件もありました。却下や承認されない理由としては、通路として使用されている土地、崖のある土地などが挙げられています。原則として建物がある土地、賃借権が設定された土地は承認されません。この制度の申請には1筆あたり1万4000円の審査手数料がかかるうえ、審査に通過した場合、土地を管理するのに必要な10年分の標準的な費用負担が必要になります。金額は土地の種類や状況によって異なりますが、原則として1筆あたり20万円ほどのようです。法務省によると制度開始から5年をめどに制度の適用範囲や条件の再検討が予定されています。高齢化と人口減少が進む中、不要な土地の管理に苦しむ地主さんの利用は増えそうです。本当は崖地など危ない土地ほど国に管理してほしいところですが、より使いやすく効果的な仕組みへの改善が期待されます。
【AI活用】賃貸住宅管理における可能性
近年、米国では賃貸住宅管理にAIを活用する動きが加速しています。現地メディアなどによると、ニューヨークのスタートアップ企業EliseAI(エリーゼ・エーアイ)は、入居者とのコミュニケーションの90%を自動化するサービスを開発し、米国の大手賃貸住宅管理会社の70%で利用されているそうです。同社のサービスにはAIチャットボットと呼ばれる機能があります。これは、「チャット(会話)」と「ロボット」を組み合わせたもので、入居者や部屋探しをする人の質問にAIが自動で返答するプログラムです。24時間対応が可能で、管理業務の効率アップ、入居率の向上、入居者満足度の向上など、さまざまな好影響がでています。導入した賃貸住宅では家賃滞納が平均50%も減少したそうです。
同社によるとAIが日々の問い合わせ対応や契約更新の案内など日常業務を処理するので、管理会社やオーナーは経営の中枢業務に集中できるとのこと。また、物件紹介や内見予約をAIが24時間行うことで、潜在的な入居者の取りこぼしを防ぐことができていると利用企業にも好評です。日本でも賃貸管理の現場は人手不足が深刻になっており、業務効率化は喫緊の課題です。賃貸オーナーにとってもメリットは大きいと思われます。日本の大手アパートビルダーや住宅メーカーなどもAIチャットボットを導入するなどしており、AIとの共存と上手な活用が重要になりそうです。