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2024年9月 仲介手数料の上限引き上げと省エネ意識の高まり
仲介手数料の上限引き上げと省エネ意識の高まり
【空き室対策】仲介手数料の上限引き上げ
空き家対策の推進に向けて仲介手数料制度が今年7月から改正されました。賃貸住宅オーナーにも関連する大きな制度改正です。この改正では、800万円以下の「低廉な空き家等」の売買における仲介手数料の上限が引き上げられました。上限額は、売主か借主の一方から受け取れる手数料は30万円、両方からなら60万円となりました。従来は、200万円以下の仲介手数料は売買価格の5%+消費税が上限なので、利用されていない空き家などの低価格物件が200万円で売買されたときの仲介手数料は11万円にしかならず、ポータルサイトへの広告掲載費用や手間を考えれば仲介会社は積極的に取り扱いできませんでした。それが、30万円まで引き上げることができるので、その差は大きいわけです。
そのため国は、2018年に400万円以下の空き家に限って仲介手数料を18万円まで上げました。さらに、今回は物件価格が800万円まで、手数料は最大60万円まで大幅に引き上げることになったのです。この改正は、全国に800万戸以上近くあるとされる空き家の市場流通を促進させるのが目的です。売買仲介会社向けITサービスを提供する会社によると「この改正で、大手不動産会社を含め、多くの仲介会社が低価格物件を扱うようになり力を入れ始めた。市場に出回る物件も徐々に増えつつある」と言います。
また投資家にとってもプラスは多いようで、ある不動産オーナーによると「市場に出回りにくかった物件が流通する可能性も高まるため、新たな投資機会にもつながりそう」と期待します。一方で注意すべき側面もありそうです。同じ投資家は「郊外で相場よりも100万円以上も安い価格で戸建て住宅が売りに出ていた。すぐに不動産会社に電話したが、すでに大勢の投資家から問い合わせがあった後だった」とのこと。
担当者は、「売り出し価格を低くし過ぎたのでしょう」と語ります。低く査定しても手数料が変わらないので、価格査定が甘くなってしまった可能性もありそうです。オーナーとしては、所有物件の安値売却には注意したいところです。
空き家については賃貸仲介の手数料も引き上げになりました。貸主からは、通常の上限である家賃1ヶ月分の1.1倍を超えて2.2倍までの手数料を受け取ることができます。1年以上誰も住んでいない戸建ての空き家や、相続などで使われなくなった住宅が対象となります。
【省エネ意識】 断熱性能で検索急増
リクルートの住まい領域調査研究機関「SUUMOリサーチセンター」が2024年のトレンドキーワードとして「断熱新時代」を発表しました。住宅性能のなかでも断熱に注目が集まっているようです。物件検索サイト「SUUMO」では、光熱費が少ない「ZEH」(ゼッチ)や「省エネ」といった用語を含む賃貸物件の問い合わせが1.8倍に増加しているそうです。こうしたキーワードを含む物件の掲載数も増加傾向にあります。「ZEH」とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、年間のエネルギー消費がゼロ以下の住宅です。高断熱、省エネ、創エネ(発電)を重視し、環境負荷を減らしつつ、光熱費も削減します。調査によると、子どものいる家庭や犬を飼っている家庭で、ZEH賃貸住宅への関心が特に高いようです。子育て中の家庭の28%、ペットを飼っている家庭の39%が、「家賃が上がっても高断熱の物件を検討したい」と考えているそうです。共働き世帯の増加に伴い、ペットのためにエアコンをつけたまま外出する家
庭が増えています。電気代をあまり気にしないで済む高断熱の賃貸住宅へのニーズが高まっているのかもしれません。
また今回の発表では、断熱性能の高さは単に省エネだけでなく健康面でも注目されていると指摘しています。断熱性能が高く、外気の影響を受けづらく室温が安定している家では、ヒートショックや熱中症のリスク軽減、結露やカビの防止など、子どもも高齢者も全世代にわたって健康上の利点が認識されつつあります。2024年4月から「省エネ性能表示制度」がスタートし、賃貸物件の広告にも省エネレベルの表示が求められるようになりました。物件検索サイトであ
るSUUMOでも表示物件が増加しているようで、賃貸市場でも断熱性能が重要な選択基準の一つになると予想しています。
「断熱新時代」を先取るように、氷点下の北海道でも暖房費が6000円ほどの「スーパー断熱賃貸」が人気を博しているようです。これから、高断熱・省エネ性能が重要な選択基準となり、新たな付加価値を生み出す可能性は大いにありそうです。断熱性能アップが賃料アップの切り札になる時代がくるかもしれません。