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2023年6月号 世界の賃貸ニュースから 伊禮

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  • 2023年6月号 世界の賃貸ニュースからイギリス・韓国・アメリカ

        

    【イギリス】スター大家に若者が夢中
     英国紙「ガーディアン」によると、インターネットで「ランドロード(家主)インフルエンサー」が注目されています。インフルエンサーとはSNSで影響力を持つ人のことです。この家主の多くが20代〜30代の若者で、購入した古い住宅をリフォームして、売却か賃貸することで利益を得ています。記事で紹介されたジェイムス・クープランドさん(28才)は、学校で勉強しながら安いローンで老朽物件を購入して、YouTubeで学んだ大工技術でリフォームして、購入した倍近い金額で物件を売却したそうです。その様子を短い動画にしてTikTokに流すと一晩で6万回もの再生数を記録し、現在では44万人以上のフォロワーが彼の動画に注目しています。フォロワーの中心は家主インフルエンサーよりも若い10代〜20代前半の若者です。自分たちより上の世代がお金持ちになっているのを見て不労所得に憧れているというわけです。しかし大家業はそんな甘い事業ではありません。日本でもスルガ銀行問題に代表されるように不動産投資には落とし穴がたくさんあります。ガーディアンの記事でもベテラン大家や大家団体がインタビューに応じており、大家業は不労所得ではなく、動画は儲かることを強調し過ぎていると懸念を表明しています。実際に大家業には様々な知識や技術が必要で、YouTubeやTikTokでは紹介されない地味な業務が多く、またいくつものリスクが待ち受けている事業です。「大家業を楽で儲かる仕事だと勘違いするな」という意見に共感しますが、それは古い考えだと若者に笑われてしまうのでしょうか。日本でも大家業を志す人は増えており、多くの若者はSNS動画で情報を得ていますので、日本の家主インフルエンサーが登場するのは時間の問題なのかもしれません。

    【韓国】チョンセ詐欺が社会問題化
     韓国には独特の家賃制度として「チョンセ」があります。その仕組みは、借主が貸主に一定額の保証金を預け、貸主は保証金を様々な形で運用して収入を得ます。双方で決めた契約期間が終了すると保証金は全額が返却されます。つまり借主はタダで家を借りることができます。その保証金の額は様々ですが、物件の売買価格の7~8割程度とされています。しかし、この保証金が返還されないトラブルが増えていて、警察が詐欺事件として捜査をしているというのです。被害者は韓国全土で数百人、被害総額は数百億円に及ぶといわれ社会問題となっています。専門家たちは詐欺被害が広がっている原因として、高騰していた不動産価格が下落に転じて、受け取った保証金よりも安い価格でしか売れなくなった物件の大家が、保証金を返せなくなったと指摘しています。大家の中には安い物件を購入して借主から高い保証金を受け取り、その保証金を別の物件購入などに投資をしている人がいて、その破綻が借主にシワ寄せされたようです。チョンセはインフレ下の高度経済成長期に有効だったもので、成熟期を迎えた韓国ではマイナス面が多い、という声もありますが、長きにわたる習慣を変えるのは難しいようです。被害者たちは政府に助けを求めていますが、現在の法律では救済は難しく、悲しいことに被害者からは数人の自殺者もでています。生活の基盤である賃貸住宅が原因で若者が命を絶つ現状に不満や怒りの声が高まっています。

    【アメリカ】オフィスの賃貸住宅化が進行中
     リモートワークが定着しつつあるアメリカでは、大都市を中心にオフィスビルを住宅に改修する計画が進行しています。オフィス過剰と住宅不足が社会問題化しているアメリカでは、2つの問題を解決できる可能性があると「ニューヨーク・タイムズ」が紹介しています。しかし、住宅に適したビルばかりではないため、想定賃料と工事代金を天秤にかけた複雑な計算が必要になるようです。また、住居とオフィスでは建築に関する規制も違うため、実際に住居として貸し出すには様々なハードルをクリアする必要があります。一方で、住宅改修に適しているオフィス物件を判定するのは難しいことではなく、ビルの建築年を見れば一目瞭然だそうです。建築技術が発展していなかった戦前の古いビルは空調が貧弱だったため、窓を開けて空気を取り込む仕様になっており住宅への改修が容易のようです。逆に現代のオフィスビルは、空調の普及で窓が開かない部屋もあるため住宅には適さないようです。ある調査では、リモートワークをしている人の9割以上が「まだ続けたい」と考えており、オフィスと住宅の関係に歴史的な転換点が来ていると指摘する声もあります。行政も都市部の空洞化を放置するわけにいかず規制緩和も検討されているようです。
     

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