業界ニュース
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2023年1月号 2022年を振り返り2023年の展望を語り合う
今年も、週刊誌やビジネス誌に執筆するライターのA 記者と、不動産業界向け新聞のB 記者、不動産ネットメディアの編集を手がけるC 記者の3 名で2022年の賃貸住宅業界を振り返りながら、2023 年の展望を語ってもらいました。
まず、半年前の「2022 年の上半期を振り返る」でも触れた話題だけど、5 月に改正宅建業法が施行されて、賃貸住宅分野では電子契約が全面解禁された。これまで紙への署名、押印、書面の交付が必須だったけど、業法改正によってネットで契約の手続きが完結するようになった。
ポータルサイトで物件を探して、ネット上で内見の予約をして、リモート内見で入居を決めたら、申し込みもネットで済ませて、IT 重説を受けて、電子契約を結ぶ。理屈の上ではこれで入居まで完結できることになりました。
不動産会社に行く必要がない、という時代になってきましたね。でも、コロナの影響もあって、非対面という選択肢が増えたこと自体は歓迎する声も多いようです。コロナも3 年目ですが対応は進んできています。
ドラマ「正直不動産」(NHK・4 月〜6 月)が評判になって、「正直」を自称する不動産会社が増えたそうだけど、一方で不動産投資の不正問題は、まさに嘘で塗り固められているというか、まだまだ尾を引いている。発端となった「かぼちゃの馬車」では、物件を手放せば借金も帳消しになる代物弁済で解決したけど、その他の案件で中古1棟マンションを購入した投資家たちも団体を作って交渉していて裁判所で調停中だね。融資総額は1,000 億円近い。だけど、世間はかぼちゃの馬車の時ほど、盛り上がっていないように感じるね
かぼちゃの馬車はサブリースが打ち切られると家賃収入ゼロという物件や、まだ完成していない物件を持っている人もいて、自己破産一歩手前の状況となった投資家も多かった。上記の中古マンションの場合は、そこまでは追い込まれていないケースもあるようでメディアの扱いも小さい。
融資の過程で通帳残高を書き換えられていたなどの不正はあったにしても、どこまで救済すべきかの線引きは曖昧です。団体は投資ではなく詐欺だったと主張していますが、投資家の中には融資書類の書き換えを知っていた人も紛れていると主張する人もいて、混沌としています。
いずれにしても、詐欺にしろ、投資失敗にしろ、生活やキャリアに傷を付ける点では同じですからね。投資用不動産のポータルサイト運営会社では、詐欺まがいの不動産販売会社の手口や実例を紹介しているけど、被害に遭いそうな人ほど、そういう情報を真剣に見ないと嘆いていました。不動産投資はかつてないほどに身近になっていますが、この件に限らず「投資は自己責任」の原則を忘れるべきではないと思いました。
2022 年に生活レベルで身に染みたのは円安とそれに伴う値上げラッシュだね。ある調査では食品は平均13 %、光熱費は平均30 %の値上がりというから、家計に直撃とはこのことだよ。
A さんもお小遣い減らされて大変そうでしたね(笑)。円安の影響でオーナーにとって痛いのは建材の値上げです。多くの建材で22 年上半期に10 〜30 %くらいの値上げがあったのに、10 月にさらに10 〜30 %の再値上げ。大手建材メーカー・LIXIL は2021 年9 月、22 年4 月に続く、3 度目の値上げをしました。70 歳近い不動産会社の社長も「こんなことは初めてだ」と目を丸くしていましたね。
設備が故障したり、時代遅れで入居に影響したら、オーナーは修理・取り替えをせざるを得ませんからね、あるオーナーはリフォーム代金が2 割も高騰していて我が目を疑ったそうです。「もう、見積もりは見たくない」と苦笑いしていました。
世の中、あらゆるものが値上がりしても、庶民の所得は増えていないので家賃は簡単には上げられないから、オーナーが吸収するしかないのか。
円安は一時、1 ドル150 円まで進みましたが、現在は140 円前後にとどまっています(記事執筆時)。しかし建材メーカーによると今後、円高ドル安に変わることはあっても、すぐに値下げはしない方針だそうですから、2023 年もオーナーにとっては頭が痛い日々が続くでしょう。
見積もり恐怖症のオーナーが増えそうだ……。
円安の影響として、いわゆる新電力と呼ばれる会社の倒産や事業撤退が起きています。入居者向けに電力契約の提案をしていた不動産会社は、電気代大幅値上げの連絡と、それに伴うクレーム対応に追われたところもあります。
オーナーによっては高圧電力の契約会社が廃業したけど、なかなか切り替え先が見つからず苦労した人もいます。中にはこれまでの2 倍以上の価格で提案されたオーナーもいるようです。結局2 割ほどの値上げで大手電力と話がついたそうです。
円安の影響で海外に出て行った工場が、日本に帰って来るのではないかという予想もあったね。ただ、日本の地方では労働人口が少ないので、それもあまり期待できないらしい。今のところ、賃貸経営にとって円安は百害あって一利なしかな。
そうとも言い切れません。コロナの水際対策が緩和されて、外国人旅行者が急増しています。世界的なインフレの中で日本の物価上昇率は最下位レベルですし、それに円安の相乗効果で安く旅行できる。マンスリーマンションに転用していた物件を再び民泊に変更したら、あっという間に来年まで予約でいっぱいになったとか、景気の良い話も聞こえてきましたよ。
2023 年は、さらにインバウンドは増えそうです。条件の合う空き室があるなら、民泊転用も面白いかもしれません。
2023 年4 月には民法改正と相続土地についての新しい制度が始まります。
ここ数年、社会問題化している所有者不明土地問題を解消するための法改正だよね。
まず、国交省調査では国土の20 %以上が実質的な所有者が不明な状態になっているとされていて、土地の有効利用だけでなく防災や災害復旧などの面からも問題視されていました。
それを解消するために、今回の民法改正は相続登記の義務化(24 年4 月)や土地を手放すことができる相続土地国庫帰属制度(23 年4 月)が整備された。過疎地などの不動産を相続する人ならば誰でも申請できると聞いているよ。処分に困る土地はたくさんあるからね。手放せる選択肢ができたのはいいことだね。
それが、どんな土地でも国にお任せとはいかないようです。申請は誰でもできますが、審査があるんです。これには審査料がかかりますし、審査が通っても土地管理のための費用が10 年分は必要とされています。そもそも、建物がある土地や崖地、境界未確定の土地などは制度の対象外になるようですから、どれくらい使える仕組みなのかは、まだまだ分かりません。
民法改正では複数人で共有する不動産について、これまでは所在が分からない共有者がいる場合、不動産の利用について共有者間の意思決定ができないといった問題がありました。軽微なものならば、全員の同意ではなく、過半数でよいことに緩和されます。また所在不明の所有者がいる場合、共有者は地方裁判所の決定を得れば、不明者の持分を取得したり、不動産全体を処分できるようになります。
新制度、法改正の行方は継続して取材していこう。
突然だけど、2023 年問題って知っていますか?
何だそれ? なんだか、毎年のように○○年問題があるような気がするけど……。
すでに日本は人口減少社会に突入していますが、2023 年以降はついに世帯数も減少すると予想されています。賃貸住宅業界全体に影響が及ぶ話だと注意喚起する識者もいますよ。
国立社会保障・人口問題研究所の発表が元になっています。「2023 年に5,419 万世帯でピークを迎え、その後は減少に転じ、2040 年には5,076 万世帯まで減る」という予想ですね。
確かに住宅業界は人口が減っているのに、市場全体は大きくなっていて、その根拠がこの世帯数増加だった。それも、いよいよ終わるというわけか。
言うまでもなく、入居者を集めるのは難しくなり、物件ごとの優勝劣敗は激しくなりますよね。
地域間の差も大きくなりそうです。例えば首都圏は2030 年に708 万世帯まで世帯数が増加し、しばらく横ばいが続いて減少に転じても、2040 年が699 万世帯と緩やかに下がっていきます。
東京一極集中というよりも、各地域の中核都市に人口が集中するといわれていますね。
来年は消費税のインボイス制度が始まるので、テナント物件オーナーの中で影響を受ける方もいるでしょう。毎年、新しい法律や制度が導入されるからオーナーさんも情報収集が重要だね。
さて、2022 年に起こったことや、2023 年に予想されることを話し合ってきたけど、感想としては、この対談も悪い話題ばかりでなく、もっともっと有益な情報を取材して届けないといけないね。頑張りましょう。