業界ニュース
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2022年10月号 事故物件に住める?「条件次第」が22%
今回は、賃貸経営にとって興味深い2つの調査結果をレポートいたします。
お客が不動産会社に求めることは?
一つ目は、不動産ポータルサイト「アットホーム」が行った、2020年4月以降に賃貸住宅を契約したお客様の「不動産会社に求めること」に関する意識調査です(複数回答可)。まず、「不動産会社に問い合わせるきっかけとなった媒体は?」という質問では、不動産ポータルサイトが66.3%でダントツのトップで、増えているといわれているSNSは9.5%でした。この不動産会社のSNSで物件を見つけた人に「どのSNSで見つけましたか?」と聞くと、YouTube(ユーチューブ)が68.8%と最多で、Twitter(ツイッター)が56.3%とInstagram(インスタグラム)が50.0%と続いています。情報量の多いYouTubeがよく利用されているようですが、SNSが物件探しに活用される割合は、これからますます増えていくことでしょう。
不動産会社ではお客様に、多くの物件を紹介すべきか厳選して紹介すべきか、意見が分かれるところですが、その答えを求めた設問があります。「物件をどのように紹介してほしいですか?」という問いに対して、「条件に当てはまる物件はたくさん紹介してほしい」が60.7%、「条件に当てはまる物件の中から厳選してほしい」が39.3%と、20ポイントの差になりました。お客様としては、情報が多い方が希望条件に近い物件に巡り合える、という想いなのでしょう。
今回の調査で興味深いのが、「物件情報以外にあったら嬉しい情報は?」という質問です。その回答は、初期費用が70.9%で最も多く、次いで治安情報が66.7%、公園や学校などの周辺の居住環境が63.8%、災害リスク・避難場所が54.9%、家賃相場情報が48.3%と続きました。仲介手数料や鍵交換代金などの初期費用を知りたい、というお客様が多いので、契約に必要な総額をわかりやすく知らせる必要がありそうです。また、災害リスク・避難場所について要望も多く、全国で被災されたニュースに触れて、住む場所の安全性を重視する風潮が高まっているようです。
「事故物件」への意識に変化は?
二つ目は、これまで忌避されていた「事故物件」と、2021年10月に国交省が発表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」についての意識と認知度についての調査結果です(複数回答可)。事故物件専門の部屋探しサイト「成仏不動産」を運営する株式会社MARKS(マークス)が実施しました。
まず、「事故物件に住めますか?」という質問には、「いいえ」が62.9%でダントツ一位でしたが、事故の内容次第で住めるが23.8%、物件の条件次第で住めるが22.2%と、意外にも2割以上の方が条件付きで「住める」と答えました。ちなみに、条件なしで住めるという回答も3.9%ありました。
つづいて「内容次第で住める」と答えた人に、「住むことが可能な事故物件は?」と聞いたところ、孤独死が9.2%でダントツの一位、火災による死亡が39.1%で二番目になりました。自殺(16.5%)や殺人(8.3%)と答えた方もいましたが、やはり事件性のない死因である孤独死物件なら大丈夫、という方が多いです。さらに「条件次第で住める」と答えた人に、「どんな条件であれば住めますか?」と質問したところ、リフォームされてきれいが83.1%、家賃が安いが82.3%とツートップでした。リフォームと家賃の減額は必須のようです。他の回答は、便利な場所が66.9%、築年数が新しいが50.0%、事故から年数が経過が43.5%と、予想どおりの答えでした。この最後の「事故から年数が経過すれば住める」と答えた人に、「何年経った物件であれば住めますか?」と質問しました。この答えには興味を覚えましたが、10年が42.6%、5年が38.9%、3年が11.1%ということで、ある程度の年数経過を希望しているのが実態です。
事故物件については、昨年10月に国交省が告知に関する「ガイドライン」を作りました。ガイドラインでは、賃貸については死亡事故発生から3年を経過したものについて「告知しなくてもよい」と定めましたが、今調査の回答者の感覚とは少しズレがあるようです。ちなみに、「このガイドラインを知っていますか?」という質問に、知らないと答えた人は77.2%もいました。ほとんどの人は、このガイドラインを知らないようです。また、「賃貸住宅を借りる際、事故の内容は何年くらい告知して欲しいですか?」という質問には、10年が31.4%、なんと31年以上が30.6%もありました。まだまだ契約時の丁寧な説明が必要なことに変わりないようです。