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台風あとの対応と「貸主対応」について
台風15 号19 号は日本各地に大きな災害をもたらしました。被害に遭ったアパ ート・賃貸マンションも少なくありません。今回は台風被害の後の対応や貸主責 任についてレポートいたします。
自然災害から建物を守る手立てのひとつが保険です。ある大家さんは台風15 号で、所有されているマンションの駐輪場の屋根が一部外れてしまい、加入していた建物の火災保険で修理することができました。
しかしホッとしたのもつかの間、今度は台風19 号の集中豪雨で床上浸水が起こり、半地下の電気設備が濡れて故障してしまいました。
また保険会社に連絡したところ今度は保険金が出ないと言われ、とてもびっくりなさったそうです。
駐輪場の屋根が外れたのは風災、電気設備の浸水は水災となりますが、加入していた火災保険には水災が担保されていなかったので保険金が出なかったのでした。
火災保険ではすべての商品が「風災・雹災・雪災」を担保していますが、昨今の住宅用火災保険商品では「水災」がオプションであることが多いため今回のようなことが起こります。
今年の台風による集中豪雨では、近くに川が無い地域でも排水の逆流で洪水が起こりましたので、加入されている火災保険に「水災」のオプションが付いているかどうかの確認も大事です。
台風で建物が被害を受け、入居者さんから賠償を求められた大家さんの話しも沢山聞きました。
地下の電気室が浸水し、水が出なくなったマンションの大家さんは「ホテルの宿泊費を払って欲しい」と言われていましたし、「地下の駐車場に置いていた車が浸水したので修理代を支払って欲しい」と言われたという話も聞きました。
建物が原因で第三者に被害があった場合の保険として「火災保険の施設賠償責任特約」がありますが、今回のケースでは保険金が支払われるでしょうか?
実はこのケースは支払い対象になりません。なぜなら、被害の原因が台風なので不可抗力とされ、大家さんに法律上の賠償責任は発生しないと考えられるからです。賃貸借契約書には『地震、火災、風水害等の災害、盗難などその他不可抗力と認められる事故によって生じた損害について、甲乙はその責を負わないものとする。』という免責事項が多くみられます。
入居者さんの感情に配慮しながら契約書の取り決めに従って対応することになります。
台風の影響で窓や屋根が破損し、「吹き込んだ雨で家財が濡れたので弁償して欲しい」という場合も、建物老朽化による雨漏りとは違って自然災害のため大家さんに責任はありません。
この場合は入居者さんが加入している家財保険を使うことができます。
不幸なことに、建物が全損して部屋に住み続けられなくなったらどうなるのでしょうか?
この場合も火災保険は対象外なので賃貸借契約に基づいて対応することになります。
このケースは民法に規定はありませんが、賃貸借契約は当然に終了するというのが判例及び通説です。
賃貸借契約書にも『賃借物の全部の滅失により使用及び収益できなくなった場合には賃貸借は終了する。』という規定が多くみられます。
さらに2020 年4 月から施行される改正民法では「賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了」が明記されるので、この通説が確定判断になるでしょう。
今年のような被害をもたらす大型台風は、「経験したことがない」とか「想定外」という表現が相応しくないほど常態化するとの予測もあります。
風災や水災などに備えるような建物の準備をする一方で、建物の火災保険や入居者加入の家財保険と賃貸借契約書の条文を再確認しておくと安心できますし、いざという時の対応に役立つと思います。