業界ニュース
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2025年3月 賃貸業界ニュースから
賃貸経営の未来を変える!住宅の省エネ化支援&顧客情報の漏洩対策のポイント
賃貸住宅の省エネ化と情報管理が重要な課題となっています。総額199億円の支援策が導入され、断熱改修が加速。一方で、サイバー攻撃による入居者情報流出が深刻化し、オーナーにはセキュリティ対策の強化が求められています。
Point 1 都が賃貸住宅の断熱支援に総額199億円
東京都の小池百合子知事は2025年度予算案に賃貸住宅の省エネ化促進策として総額199億円を計上することを発表しました。これは都内の住宅において約半数を占める賃貸住宅の断熱性能向上の底上げを目指すもので、2030年までに約100万戸の改修を目標としています。2024年度の予算額は約2.5億円だったため、大幅な増加となります。
注目すべきなのは、断熱工事費用の一部補助に加え、専門家による省エネ診断の無料派遣制度を新設する点です。診断は1棟あたり120万円を上限に全額が補助され、オーナーは光熱費などのエネルギーコストの分析から具体的な改修プランまで、専門家のアドバイスを受けることができます。
賃貸住宅市場の大きな転換点となる可能性があります。すでに新築住宅については今年4月から建築物省エネ法が施行され、全ての新築物件に省エネ基準適合が義務付けられるようになりました。この流れを受け、既存の賃貸住宅でも省エネ性能が資産価値を左右する要素となるかもしれません。
最新の入居者ニーズからも裏付けられます。物件検索サイト運営のLIFULL(東京)が2024年9月に実施した調査(一都三県在住の20~49歳の男女1,000名対象)によると、引越し検討者の70.2%が物件選びの際に省エネ性能を「意識する」と回答。特に賃貸物件への入居検討者の74.7%が「電気・光熱費を安くしたい」と答えており、購入検討者よりも10%以上高い結果となっています。賃貸物件の入居者に若年層が多く、光熱費などの月々のコスト削減ニーズが特に高いことを示しています。さらに、41.9%が「環境への負荷を軽減したい」と回答するなど、環境配慮への意識の高まりがうかがえます。(LIFULLHOME'S「物件の省エネ性能に関する意識調査」2024年9月実施)
物件の「省エネ性能」を意識しますか?(引越し検討者)
意識する 70.2%
どちらとも言えない意識しない29.8%
省エネ性能を「意識する」理由
電気・光熱費を安くしたい 74.7%
環境への負荷を軽減したい 41.9%
今回の補助制度は、都内の賃貸住宅オーナーにとって省エネ投資の初期費用を抑えるチャンスになるのは間違いありません。特に、窓やドアなどの断熱改修は工事の難易度が低く、部分的な改修から始められます。
東京都の先行事例を受けて、他の自治体でも同様の支援策が展開される可能性があります。省エネ化は社会的要請であると同時に、資産価値向上の機会にもなってきました。補助金を活用した計画的な設備投資を検討する時期にさしかかっているのかもしれません。
Point 2 賃貸経営の新しいリスク狙われる入居者情報
昨今、企業における個人情報漏洩事故が深刻化しています。信用調査会社の東京商工リサーチによると、2024年の上場企業における情報漏洩・紛失事故は189件で過去最多を更新しました。特にランサムウェアなどによる不正アクセス被害が114件と全体の60%を占め、被害規模が拡大しています。ランサムウェアとはコンピューターシステムをロックしたり、解除の代わりに身代金を要求するウイルスの一種です。
情報漏洩 過去最多 189件
不正アクセス被害 全体の60% 114件
注目すべきは、企業への直接的な攻撃だけでなく、システム業務の委託先が被害を受けることで連鎖的に顧客情報が流出する「二次被害」増加しています。実際に不動産業界でも、九州地方の大手賃貸管理会社がランサムウェア攻撃を受け、入居者や物件オーナーの個人情報が流出した可能性が報告されました。
このような個人情報の流出は、単なる漏洩にとどまらず深刻なリスクを伴います。流出情報が闇市場で取引され、特殊詐欺や闇バイトによる強盗などに悪用されるケースも報告されています。特に、賃貸住宅の入居者情報には、氏名、住所、電話番号に加え、年収や勤務先といった詳細な個人情報が含まれ、犯罪者にとって魅力的な標的となっています。
賃貸住宅オーナーとして、こうしたリスクにどう対応すべきでしょうか。まず、入居者の個人情報を守るため、管理会社と密に連携することが重要です。中長期的には、管理会社とオーナーが協力して情報の取り扱いに関連したルールを定めることも視野に入れておきましょう。将来的には万が一に備え、サイバー保険への加入を検討することも必要かもしれません。
情報セキュリティ対策は、もはや大手企業だけの課題ではなくなりました。賃貸住宅経営においても、入居者の個人情報を預かる責任の重さを認識し、適切な管理体制を整えることが不可欠となっています。