業界ニュース
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2024年11月 業界ニュースから
900万戸の空き家問題と地下風俗利用のリスク
900万戸の空き家問題と地下風俗利用のリスク
総務省の調査によると、2023 年10月時点で全国の空き家は900 万戸に上り過去最多を更新しました。5年前の前回調査から51万戸増えて30 年で約2 倍となりました。このうち、居住や使用目的のない「放置空き家」は385万戸。そのうちの2割強では腐朽・破損が確認されたようです。残る約515 万戸は賃貸・売却用、別荘などですが、この中にも管理が不十分で放置状態の空き家があるとみられています。
国土交通省は空き家対策に本腰を入れ始めており、「空き家管理業」への参入を促すため、今年6月に「空き家管理業に関するガイドライン」を作成しました。これによると、空き家管理業の主な業務は、定期的な訪問による換気や点検、除草や庭木の手入れ、災害後の破損チェックなどです。
以下の3 パターンをモデルとして上げています。
1. 空き家の管理相談ケース
困っている空き家所有者の相談窓口になる。例えば、相続で実家を引き継いだけど、何から始めればいいか分からない人の受け皿として機能する。
2. 建物外部のみの管理委託ケース
所有者が家の中の整理をしている間、建物の外側だけを不動産会社が管理する。相続した実家の中はまだ片付いていないので、他人に入ってほしくないけど、建物の外側や庭の様子を定期的に確認してほしいといったニーズに応える。
3. 建物内部を含む全面的な管理委託ケース
不動産業者が建物の内外を含めて全面的に管理を担う。相続した実家が遠方にあり、自分で管理できない。将来の活用や売却に備えて、良い状態を保ちたい人からの需要を想定している。
ガイドラインでは、空き家の管理ビジネスから売買、賃貸の仕事につながるメリットを強調していて、国が問題解消のために不動産業界の力を欲しているのがよく分かります。
隠れ空き家を見つけるシステム開発中
国交省では空き家を判定できるシステムを開発中です。これは、地図上の建物にカーソルを合わせると、空き家の確率をパーセントで示してくれるもの。上水道使用状況、住民基本台帳、民間地図情報などの複数のデータを分析し、空き家かどうかを判定するシステムになるようです。日本の空き家の数は膨大であり、冒頭の総務省の統計も調査ごとの変動幅が大きく、実態把握の難しさが指摘されています。新システムによって空き家が見つけやすくなれば、不動産取引が活性化し、リフォームや賃貸、売買といった新たなビジネスチャンスになる可能性があります。また、国や自治体などから空き家問題解決への支援が増えれば、不動産オーナーにとってもプラスになりそうです。
知らない間に「地下風俗利用」のリスク
「賃貸住宅が知らぬ間に違法な目的で使用されている!」という事例が増加しています。今年9月、東京都内で違法な風俗店営業が摘発されました。不動産会社の社長が、サブリース物件の一室を風俗経営者に仲介し、契約時に管理会社やオーナーには虚偽の情報を提出していたこと明らかになっています。店舗型の風俗店は、全国的に都心部での新規
開業が難しくなっており、マンションの一室を利用した「地下風俗」が増加傾向にあります。特に、管理人のいないマンションや、管理体制が緩い物件が狙われやすいようです。定期的な物件の巡回や入居者の職業・使用目的の厳格な審査が必要のようです。
過去にオーナーが逮捕された事例も
大阪市の雑居ビルで、違法なわいせつDVD の販売店に部屋を貸していたビルオーナーが逮捕された事件もあります。オーナーは警察から複数回の警告を受けており、テナントの違法性を認識しながら賃貸していたことが問題視されました。たとえ直接的に関与していなくても、違法性を認識しながら賃貸を継続することは犯罪とみなされる可能性もあるようです。定期的な物件の用途確認や、疑わしい活動が見られた場合は、すぐに警察へ相談する必要があります。都内の賃貸管理会社経営者は「不自然な人の出入りや、騒音などの苦情があった場合は迅速な調査が必要です。また、近隣住民からの情報にも注意して、怪しい要素があれば警察に対策を相談しています」と危機感を高めています。賃貸物件が犯罪に利用されるリスクは、後々まで風評被害が続く可能性もあり、賃貸オーナーにとって深刻な問題です。日常的な警戒と問題発生時の迅速な対応が不可欠といえるでしょう。