賃貸経営塾
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2021年11月号 収益最大化のための3つの目標
賃貸経営の大事な考え方を紹介いたします。
1つ目は、機会損失を防いで改善するという目標です。1600万円というのは実際の年間家賃収入ですね。しかし、その前提には「100%稼働した時の家賃収入」があります。空室が発生せずに年間を通して満室だったときの家賃収入です。計算すれば簡単に出るはずです。それが仮に2000万円だとすると、1600万円に対して400万円の機会損失があったことになります。これは2000万円の20%にあたります。頑張れば得られたかもしれない収入です。この機会損失の原因のほとんどは空室です。20世帯もあれば退去は年に4~5件はあるでしょう。このときの空室期間が長いと機会損失が多くなってしまいます。空室以外にも、家賃未回収や、フリーレントなどの入居時家賃サービスも機会損失になります。1番目の経営目標は、この機会損失を「10%に落とす」などと設定することです。そのために、空室対策を初めとして、どんな手を講じていくかが課題になります。
2つめは、このときの2000万円という満室時賃料を「かさ上げする」、という目標です。家賃は築年数の経過や新しいライバルの登場で、年とともに下がってくのが普通です。それをかさ上げするのは簡単ではありません。しかし、自然に任せて下がり続けるのをただ容認するのか、少しでも上がるように、あるいは維持できるように努力するのか。これも経営に必要な判断になります。仮に家賃収入を上げる(あるいは維持する)ことを目標とするなら、ある程度の投資が必要になります。それは、各室のリフォームやリノベーションであったり、建物全体のリニューアルであったりするでしょう。もっと小さな投資もあります。
仮にAさんが、上の2つの経営目標を掲げたとして、数年後に、機会損失を10%に落として、満室賃料2000万円を維持できていたら、実際の家賃収入は1800万円に増えることになります。素晴らしいと思います。もちろん簡単なことではありませんが、経営目標がシンプルで分かりやすくなるのではないでしょうか。
最後に3つめは、費用対効果の高い経費を使って収益にも着目して確保するという目標です。今までは収入を増やすことが目標になっていましたが、賃貸経営の目的は、収入を増やすことではなく「収益を増やすこと」です。収益は収入から経費を差し引いたものですから、経費の使い方が重要になります。もし、家賃収入を上げるために過大な投資をしていたら、逆に収益が減ってしまうことになります。反対に、経費削減のために必要な投資を怠ると、結果的に家賃の下落や長期空室を招いて収益悪化を招くこともあります。なので、1と2の目標を達成するための、投資という意味での経費の使い方が重要になるのです。
分かりやすい例をあげると、一部屋に300万円のリノベーションを検討するとします。目的は家賃収入をあげて(あるいは維持して)空室期間を短くするという、1と2の目標を達成することです。そこで重要なのは、1と2の達成だけでなく「それで収益はどうなるのか」という視点です。その視点は単体のみでなく複数年で考えることです。この視点で経費の使い方を判断して、収益を確保するのが3つ目の目標です。
漠然と目の前のことだけを見るのでなく、未来に目標を描いて、そのために「何をするか」考える。経営数値も、結果だけを見るのではなく、予算を立てて対比してみること。このような「賃貸経営の考え方」もありますので、お父様から引き継いで経営を始めるなら、ぜひ検討してみてください。