賃貸経営塾
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2021年5月号 ❝サブリース新法❞の2つのポイント
❝サブリース新法❞の2つのポイント
今回は2020年6月に成立した「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(賃貸住宅管理業法)
①賃貸住宅管理業者の登録
②サブリース契約の適正化
の1つの②サブリース契約の適正化について、その主旨を押さえておきたいと思います。
賃貸経営に関係する新しい法律(サブリース新法という)です。
まず言葉の定義になりますが、不動産会社等が第三者に転貸することを目的にオーナーから物件を借りる行為は「マスターリース」といいます。それを第三者に貸すことを「サブリース」というのですが、この記事ではすべて含めて「サブリース事業」で統一することにいたします。
①賃貸住宅管理業者の登録については別ページにて説明しておりますので、合わせてご覧ください。
→ 賃貸住宅管理業法とは?
なぜサブリース事業が選ばれるのか?
賃貸経営においてサブリース事業がもたらす最大のメリットは何でしょうか?それは「空室リスクからの解放」でしょう。サブリース業者が約束された賃料を毎月支払うのですから、もし空室が発生したとしても悩む必要はありません。
たとえば10年間のサブリース契約なら、オーナーは「10年間は空室リスクと無関係でいられる」と考える方が多いでしょう。あるいは、支払われる賃料も10年間は変わらない(つまり下がらない)と理解してしまう方も多いでしょう。しかし、この理解度がトラブルの元となり、訴訟にまで発展した事例が相次ぎ、このような法律で規制する理由となったのです。
つまり、このトラブルは、オーナーがサブリース事業の契約の際に、当然に理解しておくべき事項について「理解していなかった」、あるいは「知らされていなかった」ことに起因しています。そこで本法律ではオーナーが正しく理解するために、特に以下の2点を説明項目として明確化することを取り決めています。
賃料が減額になる可能性
借地借家法第32条1項では、賃料が不相当となれば契約条件にかかわらず、賃料の増減の請求ができる、とされています。つまり契約で定められた賃料でも、賃借人であるサブリース業者から減額請求されることが現実としてあり得ます。
また契約によっては「定期的な賃料の見直し」が記述される場合もあります。
したがって、その事実をサブリース契約の締結前にオーナーに対して書面に記載して説明しなければならないことが明確化されました。
ただし、無茶な減額請求が認められる訳ではなく、土地・建物の租税や価格、経済事情の変動などを考慮して「不相当かどうか」が判断されます。さらにオーナーは必ず請求を受け入れなくてはならない訳ではなく、当初に家賃決定された要素や事情を考慮した上で、協議により相当額が決定されます。いずれにしても「契約期間中は家賃は変わらない」と安心できませんので、この事実をオーナーは契約前に知る必要があります。
途中でも解約になる可能性
サブリース契約の途中でも、サブリース業者が解約する可能性があることを表示するよう義務化されました。反対にオーナーが契約解除や更新拒絶をする場合は、借地借家法第28条によって正当事由が必要という説明も必要になりました。
つまり賃借人のサブリース業者の契約解除のハードルは低く、オーナーのハードルは高いので、その事実も知っておく必要があります。訴訟やトラブルとなる原因の多くが以上の2つと考えられますので、本法の規制によって、オーナーは「理解しておくべきリスク」を事前に知ることができるはずです。その他に定められた項目がありますので、もしサブリース事業を検討されるときは、詳しい第三者に相談してみるのもよいと思います。このサブリース新法は昨年(2020年)12月から施行されています。
最後になりますが、「サブリース事業= 悪」ということではないと考えています。メリットばかりが強調されて、その反対にあるデメリットやリスクを理解せずに決断することがあれば、それが問題なのだと思います。前述のように、一定期間であれ「空室リスク」から解放され、「不相当でない範囲の賃料」も支払われます。建物内のトラブルや家賃滞納にも煩わされずに済みます。
賃貸経営には、「空室、値下がり、滞納、トラブル」といったリスクがありますが、それらを未然に防いで被害を少なくする手段として、ひとつに「サブリース」があり、他にも「管理業務委託」という選択肢があると、私たち管理スタッフは考えています。