賃貸経営塾
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地震保険の加入メリットは? よくある2つの誤解とは?
今回は、火災保険の特約ではなくセットでの加入が必要な「地震保険」についてレポートいたします。
2月号では大家さん向けの火災保険に関して「主契約と特約の選び方」について書かせていただきました。重要なポイントは、主契約で「水災」を除外することのリスクと、賃貸経営をサポートしてくれる特約を検討すること、の2点でした。今回は、火災保険の特約ではなくセットでの加入が必要な「地震保険」についてレポートいたします。
いつ、どこで起きてもおかしくない、と言われる大規模地震ですが、ひとたび建物設備が被害を受けると、賃貸経営に大きなダメージをもたらします。火災保険だけでは地震や津波による損害をカバーできないため、地震保険への加入にはメリットがあると言われます。それは本当なのでしょうか?
火災保険は不動産評価ではなく再建築価額を採用します。たとえば再調達価額が6千万円評価の場合、地震保険は半額が上限なので3千万円の契約が可能です。これは一部損の5%でも支払額は150万円です(時価が限度)。そもそも地震保険の目的は被災者の生活復興ですから、この額は決して小さくはありません。全壊なら3千万円が支払われます(時価が限度)。建て直しが目的の火災保険とは違うので再建費用には足りませんが十分な頭金にはなるでしょう。
実際に地震保険の加入率は年々増加しています。一般住宅を含む数値ではありますが「損害保険料率算出機構」によると、火災保険とセットで地震保険に加入している率(付帯率)は2018年に全国で65.2%になっています(2010年は48.1%)。大きな地震災害に遭った地域はもっと高く宮城県は86.8%、熊本県は80%です。また、全世帯に対してどの程度が地震保険を契約しているかという率(世帯加入率)は2018年には32.2%になっています(2010年は23.7%)。宮城は52.1%、熊本は40.3%です。しかし、中には地震保険に対する誤解から、加入していない大家さんも多いと思われます。その誤解のひとつは、「地震保険は支払われる額が少ない」というものです。実は保険会社は地震保険から利潤を取りません。契約者から集めた保険料は国に再保険され、災害が起きたらそこから支払われます。支払われる保険金は「全壊、大半壊、小半壊、一部損」の場合で、契約金額の「100%、60%、30%、5%」と損壊の度合いによって定められています。この一部損が5%という小さな数字なので、これが「あまり支払われない」と思われている原因です。実際に計算してみましょう。
もうひとつの誤解は「激甚災害時には保険金が足らずに支払われなくなる」というものです。地震保険の保険金は884億円までは民間が、2,244億円までは民間と政府で半分ずつ支払います。それを超えると政府が99.8%を負担する仕組みで、その規模は11兆3000億円です。余裕は十分と言えるのではないでしょうか。
地震保険は単体で申し込むことはできません。火災保険に付帯して契約する必要があります。新規に加入する時だけでなく保険期間の途中でも地震保険に申し込むことができます。もちろん保険料は余分にかかります。この保険料は建物の構造と所在地の2点によって算定されます。
鉄骨・コンクリート造などはイ構造、木造などはロ構造となりますが、木造の方が保険料は高くなります。地震保険金額1000万円で保険期間1年の場合、イ構造は7,100〜25,000円、ロ構造は11,600〜38,900円と設定されています(2019年3月現在)。金額に幅があるのは地域によって基準が異なるからです。東京、神奈川、千葉などの都市部や愛知、三重、和歌山などの沿岸部は保険料が高くなる傾向にあります。ちなみに地震保険の料金は2019年1月に改定されて全国平均で3.8%値上げされています。
前述のように地震保険は火災保険と違って買い替えや建て替えの費用は補償されませんが、住宅ローンの当面の返済資金や、被災してからの生活の安定に大きく役立ちます。