賃貸経営塾
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No.46「空前の猫ブームを賃貸経営に活かす!?」
賃貸住宅を探すお客様の根強いニーズに「ペット飼育可能」があります。
賃貸住宅を探すお客様の根強いニーズに「ペット飼育可能」があります。ペット可と言えば、室内小型犬1 匹のみ、と 言う条件が多いのですが、実は空前の猫ブームが到来しており、今後は「猫を
飼いたい」という要望が伸びて来る と言われています。
平成28 年に行われた日本ペットフード協会の「全国犬猫飼育数実態調査」によると、犬の飼育数は全国で987 万8 千頭、猫の飼育数は984 万7 千頭となっていて、ほとんど差がありません。猫は過去3 年間で3.7%増えたそうですが、 対する犬は、この間13%も減っているため、猫が犬を抜くのも時間の問題と言われています。
東洋新聞のオンライン版に、「犬と猫の飼育数が、歴史的な逆転を迎えようとしている」という記事が掲載されているくらいです。なぜ、猫の飼育は嫌われるのか?しかし、よくよく考えてみると、犬と猫の飼育数が同じで、賃貸住宅のペット可物件では圧倒的に「犬だけオッケイ」という条件が多いことを考えると、「猫はどこで飼われている」のでしょうか?不思議な現象ですね。
もし、内緒で飼われて被害を受けるくらいなら、キチンとしたルールと、猫被害を防止するような アイディアを駆使して、空室対策として活用することも検討の余地がありそうです。とは言っても、 賃貸住宅で猫飼育を可にするかという問題を考えると、今まではかなりハードルが 高かったのでは無いでしょうか。 こっそり猫を飼われてしまって痛い目に遭った大家さんの話しもよく聞きます。 猫飼育可能に踏み切れない理由としてまず一番に挙げられるのは、猫の爪研ぎにより室内が傷つけられることです。 壁紙だけならまだ良いのですが、その下のボード、ドアなどの建具や柱など簡単に修理できな い部分を引っかかれてしまうと、お部屋の価値が落ちてしまいます。一度このような目に遭うと、「もう二度と猫飼育は許可しない」と仰る大家さんも少なくありません。二つ目の理由は猫独特の匂いです。発情期の猫のオシッコは かなりの臭いを発しますので、室内がかなり臭くなってしまいます。それ以外の理由としては、猫を飼育す るといつの間にか増えてしまったり、発情期の鳴き声がうるさかったりすることが挙げられます。
このようにたくさんの不安がある猫飼育ですが、猫が犬より多く飼育されるであろうこれからの時代に、猫を飼いたいというニーズを無視し続けるのも、賃貸経営を考えると得策ではないかもしれません。また、猫は犬と違って散歩の必要がなく、吠えることもなく、単身者や共働き世帯でも飼いやすいので、そういう理由からも、今後ますます猫飼育が増えていくと思われます。
「猫の飼育可物件」の工夫とは 最近では、猫飼育に特化した新築住宅やリノベーション住宅も増えてきていますので、それらの賃貸物件で行われている工夫を調べてみることにしましょう。まずは、引っかかれてしまうことの多い壁紙から。これは、傷の付きにくい強化クロスにしている物件が多いようです。腰壁風にして、下側の、被害が大きい部分だけ張り替えることが出来るようにしてあるものもあります。そして猫用のトイレを置く場所を作り、そこに小さな換気扇を付けている物件もありました。入居者さんに、トイレの掃除をマメにしてもらったり、猫の去勢を条件にしてオシッコの臭いを軽減する方法もあるそうです。去勢をすると、あの独特の鳴き声も軽減されるそうですよ。また、猫自身のストレスを軽減すれば余 分な場所での爪研ぎなどの悪戯(いたずら)は減っていくそうで、猫の習性に合わせて、猫が喜ぶ設備を付けている物件も多くなっているようです。猫は高いところが好きなので、壁にキャットウォークを付けたり、飛び降りた時や 走った時に滑らないように床材をザラつきのあるフロアタイルにしたり、飼い主が留守中でも部屋を行き来できるように、扉に潜り戸を付けたりしている物件が増えています。
また、猫は外の景色を見るのが好き なので、外が見える場所にハメコロシの窓を設置して猫が乗れるようにしたり、窓の近くの外が覗ける位置に、猫が乗れるような台やキャットタワーを設置してある物件もありました。さらに飼う人間も便利なように、猫砂やトイレシー ト、キャットフードなどを置く場所を作ったり、トイレを置く場所を人間の動線と被らないようにしてあげたりという工夫も見受けられました。
「猫と共生できる賃貸住宅」の新築やリノベーションのコンサルティングを専門にしている方がいます。氏に言わせると、「いま猫飼育可能になっている物件は、空室が決まりにくいから「犬だけでなく猫も可にしてしまおう」という、後ろ向きな理由が多いです。それでは、本当に猫好きな飼い主の心は掴めません。猫と人間が幸せに暮らせる事を考えた物件でないと、かえって猫の被害ばかりが不安視されてしまいます。」と語っています。 猫が増えているから「猫飼育OKにしましょう」という単純な議論では無く、今の賃貸物件に現実的に取り入れることが可能かどうかを検討してみるのは、無駄ではないと思います。その上で「やはり猫は禁止にしよう」ということなら、逆に「内緒で飼われる」ことのないように、徹底的に禁止して気をつける必要があります。いずれにしても、時代と共に借主さんのニーズが変化していますので、いつも新しい情報をインプットしておく必要がありますね。