賃貸経営塾
-
No.37 良い人に長く住んでもらう ~ある大家さんの挑戦~
今回は、「良い人に長く住んでもらう」
というテーマで書かせていただきます。今回は、「良い人に長く住んでもらうというテーマで書かせていただきます。「退
去を防ぐのは難しいのでは?」と諦めてしまわず、不便や不満を無くして入居者さんの住み心地を良くすることで、長く住んでもらえる努力をすることが大事だと思いま
す。今回は、そのために「あること」と考え、実行に移した一人の大家さんのお話し
を紹介したい思います。入居者さんの声を聞きたい!
その大家さんは70 代の女性です。ずっと自主管理をしていましたが、年齢的に家
賃の管理や修繕の手配がきつくなってきたので、一部の業務を管理会社に任せること
にしました。そして、管理会社が入居者さんに、管理会社変更の通知を配布する際に、
「あるお願い」をしました。それは、大家さんが入居者さんに、いつも聞きたかった
ことをアンケートにして同封してほしい、ということでした。その女性大家さんは、、
お花の手入れのために建物周りにいることが多く、入居者さんと良く顔を合わせます。
立ち話しをする親しい入居者さんは、何か不具合等があると直接言ってくれるのです
が、あまり会えない方や、挨拶のみの入居者さんのことが、ずっと気になっていまし
た。なぜなら、その方が退去される時に室内を確認すると、何かしら故障や不具合が
あることが多く、それを言わないで我慢して住んでいたんだなあ、ということに気が
ついたからです。大家さんは、「不満や不便があっても言わない人がいる」というこ
とが経験で分かっていたので、それを聞き出す方法をいつも考えていて、管理会社か
らの通知を絶好のチャンスと考えました。そのアンケートの結果は!?
管理会社の担当者も、「いい機会なのでやってみましょう」と、二つ返事で引き受
けました。アンケートには、入居者さんがこの物件に決めた理由や、住んでいて気に
入っているところなど、前向きな質問も含め、「今後の管理に活かしたいのでご協力
お願いします」と書くことにしました。そして結果は、ほとんどの入居者さんが、アンケートに回答をしてくれて、その中に
は、「天井が高く開放感があるところが気に入っている」「間取りが使いやすい」「収
納が他の物件より多かった」などの嬉しい意見がたくさんありました。そして大家さ
んが一番聞きたかった不便や不満についても、実に多くのことが書かれていました。「洗面台の下から水が漏れて、水受けに水が溜まるので毎回捨てている」「雨が降る
と駐車場の前に水が溜まってしまい靴がびしょ濡れになるので困っている」「浴室の
換気扇の効きが悪く湿気が溜まって脱衣所の収納の中がカビてしまう」など。驚くことには、「インターホンが鳴らない」と回答した方が4 人もいらしたそうです。大家
さんはビックリして、管理会社の担当者に修理の手配をしてもらいました。また、「宅
配ロッカーをつけて欲しい」と回答した方が複数いらしたので見積もりを取ることに
しました。こんなにも「不満があっても言い出せない人がいる」とは、この大家さんの予想は大当たりでした。
住み心地アップで退去が減る!
何年も賃貸経営をしている大家さんは「いまさら聞きにくい」ですし、何年も住
んでいる入居者さんも「いまさら言いにくい」ということで、お互いにずっと思い続
けていたのですね。今回のようなキッカケがあれば、本当の気持ちを聞き出すことが
出来て、それで不便や不満を解決できれば、住み心地アップで大家さんへの感謝の念も
湧くと思います。長く住んでくれる入居者さんも増えるでしょう。新たに管理を始め
る管理会社にとっても、初対面の相手とお話しするのに、アンケートをキッカケに出
来るのは助かると思います。その後の大家さんは、挨拶だけの関係だった入居者さんとも立ち話をするようにな
ったそうです。そういう小さなことが、良い住環境を作ることに繋がるという事例で
した。