賃貸経営塾
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2024年12月 収益最大化のための!賃貸経営塾
築古物件の収益を健全化する7つのポイント
今回は、築年が30年40年物件の「収益健全化作戦」がテーマです。いわゆる“築古物件”には3つの課題があります。1つは“空室問題”。これがメインですが、この側面だけでは小手先の対策になってしまいます。そこで2つ目は“修繕計画”。築古物件の修繕費は、築浅で家賃収入が稼げる時は少ないのに、築古で収入が減った頃に多くなるというのが特徴です。長期修繕計画を作り、修繕が必要な部位と時期と費用が計算されていれば準備できるのですが、そのような物件は多くないでしょう。そこで必要なのが3つ目の“出口戦略”。「いつまで経営するのか?」の答えです。木造で40年、RC造なら60年まで活用するとしたら、築20年30年は折り返し地点です。新築時のように再投資をして、残り期間の収支計画を立てるべきです。もし5年10年で経営終了するなら、必要な修繕だけにとどめて空室問題に取り組む作戦です。この3つの関係を無視して空室だけを問題にすると小手先の対策になってしまうのです。
そのうえで、空室対策のポイントを7つにまとめました。
Point.①借主・入居者層を意識する
「入居を希望するなら誰でもいい」という方針でいると、さまざまな層の、入居条件の厳しい方が入居してきます。たとえば高齢者、外国籍、生活保護の受給者、収入の安定しない職業の人などです。家賃を支払ってくれるなら問題はないのですが、さまざまな状況の方が混在するマイナスもあります。物件のイメージが決定して、入居を検討する方の判断に影響します。入居条件を広げるとしても、借主や入居者層ついては意識しておくべきです。
Point.②入居条件を広げる
その上で入居条件を広げる検討をします。ただし、家賃の支払いや、生活上のトラブルが起きやすい面もありますから対処策を講じる必要があります。家賃なら保証会社、トラブルなら身元保証人の確保など。設備や保険の加入で対応することもできます。リスクをゼロには出来ませんが少なくする工夫や準備は必須です。
Point.③中長期で収支計画を立てる
前述した“出口戦略”に合わせた収支計画です。もし20年30年も時間があるなら、新たな賃貸経営として、その期間の投資と、その収入と支出による予算をシミュレーションした計画を立てましょう。残りが5年10年だとしても、事項のような中期視点で、多くのアイディアの中から空室対策を考えましょう。
Point.④募集条件は柔軟性と中期的な収支計算で決める
数ヶ月も空室の部屋があり、このままだと更に空室が続くかもしれない、という時、いくつもの対策が選択できます。たとえば、家賃の3ヵ月分を販促費に使うことで“3ヵ月早く決まる”と想定できるなら、それを活用したアイディアはいくつもあります。エアコンなどの設備をつける、ネットとWifi無料サービスをする、家具・家電をセットする、フリーレント3ヵ月にする、“入居費用ゼロ”の資金に充てる、などの対策です。このままの条件で続けてみるか、硬直した現状を何らかのアイディアで打開するか。募集条件のアイディアは柔軟性を持って考えることと、使える販促費の裏付けを、募集開始から退去までの中期の収支で計算することが望ましいと思います。
Point.⑤募集戦略のためにUSPを整理する
借主層や募集条件を決めるヒントになるのがUSPです。一口で言うと「強み」のことです。居住用物件には、立地、外観、共用施設、間取り(面積)、家賃、設備など、いくつもアピールポイントがありますが、築年数が経っていても、これらが色あせた訳ではありません。必ず何らかのUSPがあるはずなので、それを知ることが空室対策のヒントになります。
Point.⑥適正に家賃査定をする
該当物件の適正な家賃を知ることが中長期計画を立てる必須条件です。貸主側の希望家賃をベースにすると計画を間違えます。地域のデータ分析による適正家賃を知ってください。
Point.⑦共用部分の清掃を考える
賃料が低い物件では経費をかけて日常清掃を続けるのは難しいでしょう。あくまでも費用対効果が大事ですが、共用部分などが“乱れ放題”というのは、資産価値と収入を落とすだけです。「割れ窓理論」というものもあります。最低限の、たとえば月に1回以上の清掃は収支計画に入れるようにしましょう。
現在の物件が新築や築浅でも、20年後には、いわゆる“築古物件”に仲間入りします。空室問題、修繕計画、出口戦略の3つの課題は築年数に限らず共通なのです。その準備は、できるだけ早く始めるべきです。
※USPとは
「Unique(ユニーク) Selling(セリンク) Proposition(ポジション)」の略です。